引き続き質疑応答のまとめです。
Q.4 放送局がJASRACに支払う権利金や、JASRACがアーティストに支払う印税は、1使用1曲ごとに集計しないでドンブリ勘定していると聞きました。ただ使用曲の集計コストもタダではないし、JASRACが曲1回使用毎に1円単位で徴収して仲介すると、POSデータを握ったコンビニのような別の権力も生まれる気がします。
このアーティストへの還元システムの理想型はどう考えていますか?
(余談ですが、消費者からすると、ケータイやブロードバンドネットのように月額定額料金で使い放題や、1曲買ったら聞き放題が心理的に使いやすいという要素もあります。1曲1使用ごとに定額課金などは抵抗がある)
- 質問者 - otsuneさん
津田さんの回答
ブランケット徴収に関しては、アーティストからもJASRACに対しての突き上げがたくさんあって、特に一番大きかったテレビの全曲報告については、まさに去年から今年にかけて「とりあえず、テレビ局がやるよ」的な方向で合意は取れているという話です。NHKはもうやってたんじゃないかな。
テレビ局は「全曲報告なんて人的コストがかかって大変だ」とかそんな理屈でどんどん先延ばししてたんですけど、今の売り上げと比較すればそこまでのコストではない、という話もあるし、あとは今権利者団体がデータベース整備しようとか、創作者団体協議会やら経団連なんかも言ってますし、実際にスタートしつつありますが、そういうものの整備が「技術」で出来るなら、「曲目なんかの報告なんてものは、メタデータの中でも最も基本的な部分だから、すぐにできるだろ?」というある種の反論?というか正論があると思います。
また、音楽だともう1つレンタルのブランケット問題もありますけど、あれももうちょっと具体的にPOSデータ使って、実際の貸し出された回数に応じて個別徴収して、それを配分するようなスキームが議論の俎上に上がってきてます。
POSデータ握ったコンビニのような別の権力が生まれるというのはその通りだとは思いますが、それをどこが管理するかという問題はありますね。白田先生案は「企業がきちんとしたコンテンツの出荷統計を計上して、国に報告する義務を付けろとおっしゃってました。
定額課金に関しては、使用される回数のパーセンテージを細かく報告して、売り上げの中から個別に分配するというスキームが米国のサブスクリプション音楽配信なんかではやられているので、そのスキームでとりあえずはいいのではないかと。
ただ問題は、いくら分配のためのデータがきちんとしていても、まず団体にいって、団体が個別分配をきちんとしているかどうかという点を検証するような仕組みがないので、理論上かなりそこがザルになってしまう余地があります。そこをきちんと明確に公開させるような仕組みなり法制は必要なんじゃないでしょうかね。
いずれにせよ、方向としてはそういう全曲報告的なところに行かざるを得ないとは思いますよ。
小寺さんの回答
津田さんの話に補足しますと、テレビ局の全曲報告は、在京キー局では既に始まっているはずです。ただ僕が聴いたニュアンスだと、自主的に始めたというよりも、JASRACが言ってきたからしょうがなくやってる、という感じですけどね。
僕がNHKに居る時代は、ブランケット方式だったんで、番組内で使いたい曲は自由に選択できました。例えばNHK内の音楽ライブラリにない音源でも、昼休みとかにタワレコで買ってきたCDから使っても問題なかったわけです。そういう自由度はありましたね。
ただし、僕が担当してたのはニュースだから編集者が自分で選曲できるわけですが、通常の番組では、音楽を付けるのは音効さんの仕事です。全曲報告になって大変になるのは、放送局ではなくて音効さんだという現状があります。ネットなんかを使ってサラっと全曲報告できるならいいんですけど、いちいち書類に起こさないといけないんで、その手間で音効さんが忙殺されるということにもなっています。結局、音効さんってのはフリーランスだったり派遣だったりするので、そこにかぶせちゃってるからOKみたいなことになってますね。
それが続くとどういうことが起こるかというと、手間を嫌って同じ音楽が毎回使われるとか、権利処理が不要な素材集から引っ張ってくるようなことに落ち込む可能性があります。それはそれで、音楽収入という面でもマイナスですし、文化面でも後退と言えるかもしれません。それは全曲報告が悪いというのではなく、リスクを表現者側に投げてしまっている状況も改善しなければならないということです。
津田さんの補足
雑談(チャット)の方でも出てますけど、売り上げの数%を払うのか、使用回数に応じて青天井で払うのか、っていうところは利用する側にとっては大問題で、米国のネットラジオのライセンス問題もそこで揉めてますよね。個人的には、使用回数のデータがきちんとしていれば、売り上げの数%を払って、そこから分配を行うのが、どちらにとってもいいんじゃないかと思います。
音効さんの大変さの問題は、やっぱり統一してネットですぐ報告できるようなデータベースを作らないとダメでしょうね。でも、この問題はもうそれこそ20年くらい前から言われていたことで、そうならないようにテレビ局側が組織改編するなりして、最適化しておかなきゃいけなかったんだと思いますね。とにかく面倒くさいから引き延ばすみたいなことでやってきたツケが、音効さんだけに回っちゃってるってのは、いかにもテレビ局的というかなんというか。
自分のところの著作権処理がグダグダなくせに、ネット業者には必要以上に厳しく言うんだから、まぁひどいダブルスタンダードだよな、とは思いますね。
